第25回 「ネコ同士のけんかに潜む皮膚感染の話」

飼っている猫が家の外に出ることがある、あるいは2匹以上の猫を買っているという場合、飼い主が見ていない間に猫同士のけんかが起きている場合があります。猫の皮膚は三味線にするくらい 丈夫ですが、猫の歯の鋭さには太刀打ちできず、けんかで噛み付くと、皮膚を突き破ってしまいます。噛まれた傷口はすぐに閉じて、一見、傷口とは分からなくなってしまいますが、猫の口の中には細菌 だらけですから、閉じた傷口の内側には細菌が入り込んでいて、何日かするとそこに膿がたまってきます。何日がするとそこに膿がたまってきます。膿が大量にたまると行き場を失って、皮膚が噛まれた傷より ずっと大きな範囲で破裂します。胸を噛まれて歯が皮膚を越え、筋肉も突き破った場合には肺のまわりに膿がたまってくることにより、呼吸が苦しくなってしまいます。入り込んだ菌が血流に乗って全身を回るとぐったりしてしまうこともあります。  
第24回 「イヌの甲状腺機能低下症の話」

前回のこのコラムでは、ネコの甲状腺機能亢進症について書きましたが、今回はイヌの甲状腺機能低下症を取り上げます。甲状腺機能低下症は、甲陽線機能亢進症とは逆に血中の甲状腺ホルモンが正常より少なくなることによって起きる病気です。ネコでは、甲状腺機能亢進症になる例が、甲状腺機能低下症になる例よりはるかに多いですが、イヌでは、甲状腺機能低下症になる例が、甲状腺機能亢進症になる例よりずっと多いです。 イヌの甲状腺機能低下症の主な症状は、疲れて寝てばかりいたり、皮膚がカサカサして脱毛したりするというものです。 ただし、寝てばかりいたり、毛が抜けてきたからといってこの病気だと即断することはできず、血液を採って甲状腺ホルモンの量を測ってみなければいけません。 それで、もし甲状腺機能低下症だと断定されたら、甲状腺ホルモン製剤を服用することにより、血中の甲状腺ホルモンの量が正常になり、症状が軽減されるでしょう。この薬は長く飲み続けるのが良いようです。  
第23回 古くて新しい病気 「ネコの甲状腺機能亢進症の話」

近年日本では高齢のネコに甲状腺機能亢進症が見つかる例が増えています。この病気は症状だけからは診断を下すことができず、併せて血液中の甲状腺ホルモンの量を測ることによって診断が可能であって、この測定検査が、本邦では近年になって広く一般的に行われるようになったという事情があります。
この病気そのものは昔からあったのでしょうが、我が国における長生きのネコの増加と、甲状腺ホルモンの測定検査の普及とが、当該診断例の増加をもたらし、注目を集める病気となったということでしょう。 典型的な症状は、元気があって食欲旺盛なのに痩せてくるというものです。もし、これにお心当たりがあって、ご心配ならばネコちゃんを獣医師に診てもらうとよいでしょう。治療は、外科手術をする場合もありますが、薬を続けて飲んだり、食餌療法をしたり、これらを組み合わせて行う場合も多くあります。

 
第22回 「大腸炎の話」

ワンちゃんは時として、大腸炎になることがあります。大腸炎と聞くと思い病気のように感じるかもしれませんが、ヒトがおなかを壊して何度もトイレに駆け込むような下痢と ほぼ同じ病態です。ただ、ヒトの場合は、それだけで血便になてしまうことは少ないのに対し、ワンちゃんは腸の粘膜が傷つきやすいので、便に血が混じることが比較的多いという 違いがあります。 そうした下痢のとき、ヒトでおなかがゴロゴロ鳴ることがあるのと同様に、ワンちゃんでも鳴ることがあります。これは食物が消化され、栄養が吸収されたあとの残りカスを腸が肛門のほうへ 送る動きが活発になり過ぎたために聞こえる音です。大腸は残りカスから水分を吸収する働きがありますが、十分に水分を吸収しないうちに肛門へ送ってしまうと、水分を多く含んだ便、つまり 下痢となって出てくるのです。ヒトがおなかを壊しても病院に行ったり、薬を飲んだりせずに自然に治ることがあるのと同じように、ワンちゃんのそのような下痢も、放っておいても治ることは ありますが、なかなか治らないこともあります。また、これとは別の病気の可能性もあります。ご心配であれば動物病院にかかると良いでしょう。

 
第21回 「認知症の話」

ワンちゃんにも認知症はあります。15歳を超えるような高齢ワンちゃんが、昼も夜もなく起きている間じゅう鳴き続け、鳴き疲れたら眠り、目が覚めたらまた鳴き続けるということがあれば認知症の疑いが あります。 鳴き続けるだけではなく、歩ける場合は、円を描くようにぐるぐる回り続けるか、狭い隙間に頭を突っ込んで後ろに下がることができず、そのまま見動きがとれなくなったり、歩けない場合は横になったまま、ずっと手足を ばたつかせたりすることもあります。
そうなると、起きていれば体力を消耗するばかりだし、飼い主さんも見ていて辛かったり、泣き声が近所迷惑になることもあるので、睡眠薬で落ち着かせるといいでしょう。 ただ、ずっと一定の姿勢で寝かせ続けていると、床ずれができやすいので注意が必要です。

 
第20回 「脂肪織炎の話」

ネコよりもイヌに多い病気で、脂肪織炎(しぼうしきえん)というものがあります。体幹の表面の一部が少し硬くしこりのようになって、やがてそこに穴が開いて、中からどろどろした、ときに血混じりの汁が 出てきます。
これは皮下脂肪に炎症が起きているのです。皮下脂肪の少ない頭や四肢よりも、皮下脂肪の多い胴体で起き、あちこち同時に起きることがあります。 炎症が起きる原因は、体に備わった免疫機構が自分の皮下脂肪を異物だと誤認識して攻撃したためという場合が多く、何らかの理由で皮下脂肪の中に細菌が入り込んだためという場合や、原因 がよく分からないという場合もあります。 治療は、炎症を抑える薬を飲んだり注射で打ったりすることが必要で、ビタミンEを摂るのも効果的な場合があります。ただ、いったん治っても再発することも間々あります。

 
第19回 「特発性前庭疾患(突然起こる平衡感覚の異常)の話」

中高齢のワンちゃんが昨晩まで元気に散歩していたのに、今日は頭が一定の方向に傾いてしまって、立ち上がってもよろめいて歩けないか、あるいは立ち上がることすらできなくなり、加えて食欲もなく、吐いてさえいるという 事態に陥ると、たいていの飼い主さんはびっくりしてしまうでしょう。 ところが、獣医師にとっては、こうした例に出会うのは決して稀なことではありません。
実は、この劇的とも言える症状の原因となっているのは、耳の鼓膜の奥にある平衡感覚をつかさどる部分に起きた炎症である場合が多いのです。 平衡感覚がおかしくなってしまうので、目が回ったような状態になり、気持ち悪くて吐いてしまい、ごはんを食べるどころではないというわけです。 併せて眼球がこきざみに揺れるという症状もしばしば見られます。この病気はしばらく通院して治療を受ける必要がありますが、たいていの場合は徐々に良くなっていきます。

 
第18回 「顔周りの観察で歯周病発見の話」

ワンちゃんの顔の、眼より少し前の部分を観察してみましょう。腫れている、または膿が出てきている、あるいは穴が開いているといったようなことが見られたら、もしかすると それは意外なところに原因があるかもしれません。実は、その部分の上唇をめくったところの歯の根っこ起きた炎症が、拡大し、顔面にまで及んでいる例が少なくないのです。 そうした場合、歯の根っこは、ばい菌が巣食い、化膿し、歯肉は赤くただれ、歯はぐらぐらすることがあります。 穴は、歯の根っこから通じており、たまった膿が出たあとの状態なのです。膿が貫通するほどひどくないときでも、歯をそのままにしておくと治りが悪いので、ぐらぐらしている歯は 出来れば抜いて、そこを消毒するといいでしょう。ワンちゃんは、虫歯になることはヒトほど多くありませんが、歯周病はしばしば目にします。消毒液の泡が穴を通って反対側に出てきたのを、 獣医師になって初めてみたときには、目を見張ったものでした。

 
第17回 「ネコの口内炎の話」

みなさんのおうちのネコちゃんが、やわらかい食べ物だけ食べて、かたい食べ物を残したり、食べ物を目の前にして、食べようか食べまいかを迷っているようなしぐさをしたり、 食べるには食べるが食べにくそうにしたりすることがあったら要注意です。 そういうときは口内炎になっている可能性があります。
口内炎になると、口の中が痛いので、食べたくてもあまり食べられなくなるのです。 よだれがいつもより多く出たり、口からくさいにおいがしたりすることもあります。 口内炎は体の抵抗力が落ちたときにかかりやすく、放っておいてもなかなか治らないことがあるので、気になる症状があったら早めに動物病院を受診してください。

 
第16回 「散歩中急にケンケン足になったら要注意の話」

ワンちゃんが元気に散歩していて、急に足を上げてケンケンで歩き出すということが起きることがあります。
まず考えられる原因は、落ちていたガラスの破片やクギなどを踏んで足の裏が傷ついたり、虫やヘビなどに足を咬まれたりして痛いという場合です。 他には、ジャンプしたときや急に方向転換したときに、足に瞬間的に大きな力がかかって、骨と骨をつなぐ靭帯を痛めてしまった場合や、後ろ足に関しては、膝の お皿の骨が本来位置している溝からずれて痛い場合があります。
いずれにしても、その場で飼い主さんが、何が起きたのか確かめようとしても、痛がって足をよく見せてくれないことがあるので、動物病院で診てもらうのがいいと思います。 お皿がずれた場合には、お皿が元の位置に戻れば、痛みが引いて、何事もなかったように普通に歩き始めることもあります。
また、まれに足の骨が折れている場合がありますが、そのときは完全に足を上げて地面に全く下ろさなくなり、触ると大きな悲鳴を上げます。

 
第15回 「皮膚における感染の話」

ワンちゃんやネコちゃんの感染というと、他のワンちゃんやネコちゃんとの接触によって、そのコが持っていたウイルスや細菌が、体に侵入して病気になるというイメージをお持ちの方が多いことでしょう。
しかし、このイメージに当てはまらない感染が起きる場合も多くあります。 その一例を挙げましょう。
外界と接している皮膚の表面には、元来、細菌が多く存在します。しかし、正常な皮膚には細菌に対する防御システムがあるので、それらの細菌が皮膚に悪さをすることはありません。 ところが、何らかの原因でその防御システムが破綻すると、細菌が皮膚の内部に入り込み、皮膚に病変を作ります。これも感染なのです。 感染した細菌は、抗生剤や抗菌剤を使ってやっつけなければいけません。皮膚は細胞が層状の構造になっていて、最も外側の層から垢やフケとなってはがれていき、内側の層が順に外側に移り変わります。 そうして皮膚の層が一新するには、3週間ほどかかるので、その間は抗生剤や抗菌剤を塗り続けたり飲み続けたりする必要があるのです。

 
第14回 「腫瘍(しゅよう)の話」

飼い主の皆さんは、腫瘍(しゅよう)という言葉をお聞きになったことがあると思います。腫瘍とは、ある細胞が他の細胞とのつり合いを無視して、やたら増え続ける病変のことを言います。腫瘍はどこにでもできる可能性がありますが、飼い主の皆さんが見つけることが できるのは、皮膚にできる腫瘍です。 ある細胞が皮膚でめくらめっぽうに増えると、そこがかたまりとなって、周囲より盛り上がってくるので気付くのです。ただし、盛り上がったかたまりが全て腫瘍というわけではありません。 正確には、そこの細胞を取って顕微鏡で細かく見ることによって、腫瘍かそうでないかが分かります。そうやって調べて、腫瘍と判明した場合、同時に何の細胞が見境なく増えたものなのか、また、良性か悪性かも分かります。皮膚にできた腫瘍だからといって、皮膚の細胞がでたらめに増えたとは限りません。 例えば血管の細胞が皮膚で無秩序に増えることもあります。良性と悪性については、ここではイメージとして、体にあまり悪くない腫瘍、体に悪い腫瘍とお考えください。
さて、腫瘍は何の細胞の腫瘍か、良性か悪性かなどの諸条件を勘案して、治療するかしないかを決めることになります。治療の仕方は、一般的には3つの大きな柱があります。腫瘍を外科手術で切り取る方法、薬で腫瘍を小さくする方法、放射線を当てて腫瘍を小さくする方法です。 これらのうちからどれかを単独で用いるか、複数組み合わせて用います。しかし、腫瘍については、専門家の間でもまだ解明されていない事柄が多くあり、その診断と治療の方法は発展途上で高度に複雑です。 当院でできることは限られているので、腫瘍ではないかと疑った段階で、専門医がいる大きな病院を紹介することもあります。いずれにしろ、腫瘍は命に係わる場合があるので、皮膚にできたものを見つけたら獣医師に相談なさることをお奨めします。

 
第13回 「交通事故の話」

猫や犬はひとりで外出すると交通事故に遭うおそれがあります。交通事故が命にかかわるのは、頭を打って脳にダメージを受けていたり、体を打って内臓が傷ついたりするからです。 脳は全身の機能を統括するところだから、脳がダメージを受ければ生命活動に破綻をきたします。内臓が傷ついて命が危険にさらされるとは、どんなことが起きる可能性があるのか具体例をいくつか 挙げてみましょう。
膀胱が破裂して尿がおなかの中にあふれると、尿中の老廃物がおなかにまき散らされます。腸が破れて内容物がおなかに漏れると、おなかの中が細菌だらけになります。脾臓が傷つくと、脾臓は血液が豊富にあるので、 大量に出血します。横隔膜が破れて腸が胸にまで移動すると、心臓や肺は圧迫され、拡張・収縮が妨げられます。肋骨が折れて肺に突き刺さると、呼吸が十分にできません。こういった状況は命取りになりかねません。 手足の骨折は脱臼は、直ちに命に危険が及ぶというものではありません。そのほか、背骨が折れたり脱臼したりすると、脊髄が損傷され、体の一部に麻痺が起きるかもしれません。骨盤の骨折では便が出にくくなる可能性が あります。いずれにしても、犬の散歩はリードをつけて行い、猫は外に出さないのが、交通事故防止には有効でしょう。

 
第12回 「犬の熱中症の話」

熱中症は、暑い日中の散歩や蒸し暑い室内や車内での留守番などが原因で発生します。 急激な体温の上昇により、あえぎ呼吸(パンティング)、よだれ(流涎)といった症状が現れ、ひどい場合には呼吸困難などを 起こし、ときに命に関わることもあります。

愛犬が熱中症になっても、発見が早くまだ意識があれば、冷たい水をたくさん飲ませ、また、お風呂場で体全体に水をかけるなど、急いで 体の内外から冷やして体温を下げてあげることが大切です。

ほどんど汗をかかない犬は、狭い室内や車内に閉じ込められたり、水分制限されたりといった環境では体温調整が難しく、熱中症になりやすい傾向があり、 夏にかけて特に気をつけたい病気です。

 
第11回 「下痢の話」

一般に犬の便は硬く、回数は一日1〜3回くらいです。もし下痢をしても食欲があり、元気な場合は数日間様子をみてもいいでしょう。徐々に便の状態が良くなっていく (硬くなっていく)ようならそのまま回復していくと思われます。しかし、一日に何度も下痢をする、何日も下痢が続く、元気や食欲がなくなってきた、このように症状が 悪化してくる場合や症状が良化しない場合は動物病院を受診することをお勧めします。
下痢や軟便の場合にはその色、形、回数、出血や異物の有無を観察してください。 そして嘔吐が伴うか否かも観察してください。寄生虫の疑いもありますので、便の内容物も観察してください。
下痢の種類
○軟 便・・・・・・形は残っていますが、非常にやわらかくつぶれやすい
○泥状便・・・・・漢字の通り泥のような便です
○水様性下痢・・・水分が非常に多い便で水のような便です
下痢の原因
○食事
消化性の低い食事や食べ過ぎ、食餌内容を変更した場合、食物アレルギー、腐ったものや拾い食いした場合などに起こります。犬の下痢の要因としては最も多く見られます。
○感染症
寄生虫、細菌、ウイルスなどが感染して下痢を起こします。
○毒物・薬物
一部の薬品や毒物の摂取によって下痢を起こします。
○消化器の機能
胃やすい臓、消化管粘膜の病気によって消化力が低下し下痢を起こします。
○全身性の病気
内分泌疾患、肝疾患、腎疾患、腫瘍などでも下痢を起こすことがあります。
○腸内細菌のバランスの変化
抗生物質の投与や腸管の機能異常により腸内細菌のバランスが崩れ下痢を起こします。
○ストレスによる神経性下痢
引っ越しや移動などの環境変化がもたらすストレスによって下痢を起こします。

 
第10回 「嘔吐と吐出」

嘔吐も吐出も「吐く」という症状を表していますが、違いを知っておけば体のどこに異常があるのかが分かります。嘔吐の場合は食べたものを胃や十二指腸から戻し、吐く前におなかの筋肉や横隔膜を収縮させて 吐きます。少し時間をおいて複数回吐くのも特徴です。これに対し、吐出は胃に到達する前に何の前触れもなくすっと吐き出します。 嘔吐であれば胃や腸に、吐出であれば食道に、何らかの問題がある可能性が分かります。嘔吐や吐出した場合、回数が一日一回程度で、元気・食欲がない、下痢・発熱といった病気を示すほかの症状がないときは、数日様子を見てもいいと思います。 しかし、一日に何回も繰り返したり、嘔吐以外の症状も見られた場合、数日間嘔吐が続いている場合には動物病院を受診したほうがいいでしょう。 特に、ぐったりするなどの全身症状がある場合には胃腸の病気だけでなく、肝臓やすい臓に問題がある場合はガンなどの可能性もあります。

 
第9回 「腎臓の話」

腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排泄し、体内の水分や電解質のバランスを維持しています。腎臓の機能に障害が生じると、血液中の老廃物が蓄積することにより 様々な症状が現れます。しかし、多くの腎臓の組織がダメージを受けるまでは、残りの健康な組織がその機能を代償するため、症状が出るまでには時間がかかります。そのため、気付かない間に腎臓病が進行していくことになります。
腎臓病は原因の部位により3つに大別されます。

  • 腎前性:貧血や脱水、心不全などにより腎臓に送られる血液量が減少するもの
  • 腎性:薬物、感染症、腫瘍などにより腎臓そのものが傷害されるもの
  • 腎後性:尿路結石や腫瘍など尿路系が傷害されるもの

元気や食欲がなくなってきたり、水をよく飲む・排尿の回数が多い、頻回の嘔吐、毛づやが悪くなってきたなどの症状が見られたら早めに検診を受けることをお勧めします。一度障害を受けた腎臓の組織を元に戻すことはできないので 、早期発見し適切な食事管理をすることが重要となります。

 
第8回 「猫の心筋症(心臓の筋肉の病気)」

猫の心筋症は心臓の筋肉の厚さや働きの状態によって大きく3つに分けられます。
 1.肥大型心筋症
猫の心筋症で最も多く発生するタイプで、心臓の筋肉が正常よりも厚くなってしまう病気です。原因は常染色体性優性遺伝と考えられていますが詳細は不明です。肥大型心筋症は他の心筋症に比べ動脈血栓症(下記*印参照)の発生が多くなっています。
2.拡張型心筋症
逆に心臓の筋肉が薄くなってしまう病気です。以前は肥大型心筋症と同等の発生率でしたが、多くがタウリン欠乏により発生することが報告され、各ペットフードメーカーがキャットフードにタウリンを補強したため、拡張型心筋症の発生は減少しました。
3.拘束型心筋症
心臓がうまく広がることができずに働きが低下してしまう病気です。原因は感染症や自身の免疫の不具合によって生じた心筋の炎症の結果生じると考えられています。

【症 状】
全身に必要な量の血液を心臓が送れなくなってしまうために様々な症状が見られますが、無症状の場合もあります。
  • 速い呼吸、呼吸困難、咳
  • 一日中ぐったりしている
  • 動脈血栓症による後ろ足麻痺
*動脈血栓症
腹部の動脈に血のかたまり(血栓)が詰まってしまうために後ろ足に血液が行かず、後ろ足が麻痺してしまう病気です。突然発症し後ろ足の麻痺、痛み、前足だけで移動するなどの症状を示します。症状が軽い場合には片足だけの場合もあります。

心筋症は猫の心疾患としてきわめて重要です。とくに原因不明で急激に悪化傾向を示すため、できるだけ早期に治療する必要があります。よってこのような症状が見られたら早急に動物病院を受診してください。

 
第7回 「心臓の話」

 心臓の働きと構造
全身の細胞に必要な酸素や栄養分は血液によって運ばれます。また、細胞の活動の結果生じた二酸化炭素や老廃物は血液によって除去されます。 このような血液の流れを作っているのが心臓です。心臓は全身へ血液を送るポンプの役割を担っています。 心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。右心房と左心房の間は心房中隔、右心室と左心室の間は心室中隔という壁で隔てられています。 さらに、心房と心室の間の房室弁、左心室と大動脈の間の大動脈弁、右心室と肺動脈の間の肺動脈弁によって血液の逆流を防いでいます。
左心室から排出された酸素の多い血液は動脈を通って各臓器に送られ、二酸化炭素を回収して静脈血となり右心房に戻ります。右心房から右心室へ送られた静脈血は 肺動脈を通って肺へ送られ、酸素と二酸化炭素を交換して左心房・左心室へと戻ってきます。 何らかの原因で心臓のポンプ機能に異常が生じると、全身へ送り出す血液が減少してしまいます。そのため正常なときも多く働かなければならず、弱った心臓の負担が 増すことになってしまいます。このようにして心臓の病気が進行していきます。
中年齢から高年齢の犬でも最も多い病気〜僧房弁閉鎖不全症〜
本来は左心房から左心室へと一方向へ血液が流れ、左心房と左心室の間にある僧房弁によって血液が逆流するのを防いでいます。この僧房弁が何らかの原因で完全に閉じ なくなると左心室から左心房へ血液が逆流してしまい心臓に負担がかかってしまいます。このような病気を僧房弁閉鎖不全症といいます。
発症しやすい犬種
マルチーズ、トイプードル、シーズー、チワワなどの小型犬では高齢になると発症しやすくなります。また、キャバリヤは遺伝的な影響があり比較的若齢でも発症することがあります。
症状
初期であれば日常生活にはほとんど支障なく生活できますが、病気の進行により運動時や興奮したときに呼吸が乱れやすくなり、咳も出始めます。さらに進むとあまり動こうとしなくなり、 安静時でも咳が出るようになります。
治療法
僧房弁閉鎖不全症は治療により完治する病気ではありません。そこで薬を飲むことにより心臓にかかる負担を減らしたり、心臓の動きを助けて症状の進行を遅らせるという生活の質を向上させることが 治療の目的になります。日常生活での注意点としては病気の状態に応じた運動制限や塩分制限が必要です。

 
第6回 「シャンプーの落とし穴」

 自分の愛犬が皮膚病になったら、まずシャンプーをしてみるという飼い主さんが結構いるのではないでしょうか?もちろん、シャンプーというのは 場合によっては皮膚病の治療のひとつになります。しかし逆に今の症状をさらに悪化させてしまう場合があることを忘れてはなりません。
かさぶたやフケはシャンプーで洗うと確かにきれいになったようにみえますが、2、3日後に「また皮膚が脂っぽくなってきた」「フケが出てきた」 というようなことはよくあります。 状態にもよりますが、脂漏症を伴わないアレルギー、アトピーの犬のシャンプーは3〜4週間に1度の割合で十分だと思います。 当然、シャンプーをして皮膚を清潔に保つことはとても大切なことですが、過度のシャンプーはもともと犬の皮膚に備わっているバリア機能を破壊してしまうことがあるのです。 シャンプーの頻度については、症状により全く異なるため獣医師とよく相談して決めるのが良いでしょう。 皮膚病の犬のシャンプーで気をつけていただきたい点を最後に示しておきます。
@シャンプー時の水温は25〜27℃くらいで行う
Aシャンプーをした後はよく洗い流すこと
Bシャンプーをきれいに水で流した後はできるだけタオルドライで、その後お散歩に行き日光での乾燥が良いでしょう。ドライヤーを使う場合は冷風が良いでしょう。

 
第5回 「毛包炎のお話」

 夏場に多く見うけられる皮膚病のひとつとして毛包炎があります。「背中などにできものができている」という主訴で病院に連れて来られるケースが 多いように思います。特に、パグやボストンテリアなどの短頭種・シュナウザー・プードル・シーズーなどのアレルギー好発犬種に多く見られます。 原因は、もともとアレルギー体質で、夏場の高温多湿な時期に細菌が毛穴の部分に感染し併発するケースか、シャンプーの不十分な乾かし、不衛生な環境 によっても起こります。膿皮症と同義語で使用されたりもしますが、毛根一致性に感染が起きている場合を毛包炎と診断できます。 もちろん、早期に治療されなかったり、不適切な処置により症状が拡大し、全身性の膿皮症に移行していくことも多く有ります。治療は シャンプー、免疫療法、抗生物質の内服、消毒などがあります。症状としては、小さな丘疹(5ミリくらいのできもの)、膿疱(黄色いうみの溜まったできもの)、 痂皮(かさぶた)、色素斑など様々な病態を示すため状態に応じて治療を選択していくことがとても大切になります。シャンプーをすれば清潔になると 思われがちですが、シャンプーすることによって逆に悪化するケースもかなり多いようです。

 
第4回 「脂肪織炎のお話」

 「あれ、何かできものができている。」と発見される病気のひとつに無菌性脂肪織炎というものがあります。最初はイボのような小さなかたまりで、そのまま 消えるものもありますが、ほとんどは除々に大きくなり、自壊(ベトベトでうんだような液体が出てくる)し、かさぶたができてしまいます。 治療をしないで、そのままにしておくと体のあらゆる部分に広がってしまい、発熱・食欲不振・嘔吐を伴うこともあります。 原因ははっきりとは解明されていませんが、自己免疫疾患だと考えられています。それゆえ、治療も免疫を抑制していくお薬を使っていくため、できるだけ 副作用の少ないお薬の内服が必要となります。「小さなイボ、それが実はワンちゃんの大きな敵となるかも知れません。」イボだと軽視しがちですが、早めに 来院されることをおすすめします。

 
第3回 「冬から春先に起こる皮膚病のお話」

 寒い日が続いておりますが、今回はこの時期に多く見られる寒冷凝集素症という皮膚病についてお話しましょう。 この疾患はそれほど多くはありませんが、冬〜春先にかけてポメラニアン・ミニチュアシュナウザーなどに比較的多く見られる皮膚病です。 原因ははっきり立証されていませんが、自分の免疫バランスが崩れることにより過剰にIgMという抗体が産生されることで発症します。 症状としては、体の末端部、特に耳の辺りのふちのかさぶた、色素沈着(耳のふちが黒くなる)、耳に亀裂が入ってさけてしますといったものです。 暖かくなり自然治癒する場合もありますが、そのまま治療しないと耳が壊死(腐っていく)していく場合も多々あります。さらに自己免疫疾患ですので 貧血や、白血球の上昇がみられ、食欲、元気がなくなったり、呼吸が苦しくなったり、まっ黄色の尿が出たりする自己免疫性溶血性貧血を併発することもあります。 お耳などが毛が抜け、冷たい触感で、色が変わってきたりするような症状がでたら来院して獣医さんに是非みてもらってください。

 
第2回 「アレルギーについてのお話」

 今回は、犬猫の皮膚病の中で最も多い疾患であるアレルギーについてお話します。前回も少しお話したように、毛が抜けて赤くなり、かゆがって 舐めるというのが最もわかりやすいアレルギーの特徴です。しかし、人と同じように犬猫においても様々なアレルギーがあります。アレルギーの 原因となるものには、生環環境中のハウスダスト、食物、散歩時に通る草木、食器、ノミ、ダニ、毛布、じゅうたんなどいろいろなものがあります。 それらの原因を見つけるために何に対して、アレルギーがあるのか検査をすることは確かに重要なことかも知れません。しかし、実際検査をして陽性(アレルギーの原因) となったものを全て除外してもアレルギーの症状が改善しないワンちゃんが結構いるというのも事実です。
 アレルギーとは生まれながらの体質に関与していることが多いため、人の花粉症などと同じで、完治するというのはまれです。つまり、お薬を長期間飲ませなくてはいけないのです。 アレルギー治療において、一番大切なことは、かゆみを止めてあげること、毛を生やすことだと思いますが、それと同時にどのようなアレルギーの可能性があるかを獣医師に診断して もらい、それを考慮にいれた上で、いかに体に負担の少ないお薬を飲んで、アレルギーと付き合っていくかということです。次回は、冬〜春先に起こるちょっと変わった皮膚病をご紹介しましょう!

第1回 「これって皮膚病?」

「これって皮膚病?」と飼い主さんがすぐに発見できるように、皮膚病とはペット達の皮膚に病変がみられる最も 分かりやすい病気の1つです。と同時に、診断、治療、コントロールはとてもむずかしいのです。皮膚病には、アレルギー、自己免疫疾患をはじめ数十種類もの病気が あります。かゆい・皮膚が脂っぽい・赤い・かさぶたができているなどが一般的な症状です。 このような症状があれば、お早めに動物病院で診てもらいましょう。さて次回はワンちゃんのアレルギーについてお話しましょう。

足跡

COPY RIGHTS 2007(C) AONO PET CLINIC. ALL RIGHTS RESERVED.